安心につながる 大切な情報の整理と記録方法
はじめに:将来の安心のために、今できること
一人暮らしを続けていく中で、将来のこと、もしもの時のことなど、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。元気なうちは想像しにくいことですが、体調を崩してしまった時や、予期せぬ出来事が起きた時に、自分自身や離れて暮らす大切な人が困らないように、今から準備できることがあります。
その一つが、「大切な情報の整理と記録」です。ご自身の医療のこと、お金のこと、身の回りのことなど、いざという時に必要な情報をまとめておくことで、大きな安心につながります。
なぜ大切な情報をまとめておくことが必要なのでしょうか
人生には、思いがけない出来事が起こる可能性がゼロではありません。急な病気や怪我で入院が必要になったり、災害で避難が必要になったり、あるいは認知機能が少しずつ変化していくこともあるかもしれません。
そのような「もしも」の時に、ご自身の状況や希望を正確に伝えることが難しくなる場合があります。また、離れて暮らす家族や、いざという時に助けに来てくれる友人、あるいは関わってくれる地域の支援者が、ご本人のことを理解し、適切に対応するためには、事前にいくつかの情報が必要です。
大切な情報をあらかじめ整理し、記録しておけば、ご自身も安心して日々を過ごせますし、いざという時に周りの人がスムーズに動くための助けとなります。
どんな情報をまとめておくと良いのでしょうか
具体的にどのような情報を整理し、記録しておくと良いか、いくつかの例をご紹介します。ご自身の状況に合わせて、必要だと思うものから始めてみましょう。
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医療・健康に関すること
- かかりつけの病院名、医師の名前、連絡先
- 過去にかかった大きな病気や手術
- 現在服用している薬の名前や量
- アレルギーの有無
- かかりつけの薬局
- 持病や健康状態について、知っておいてほしいこと
- もしもの時の医療やケアに関する希望(延命治療など)
- 告知を希望するかどうか
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連絡先に関すること
- 家族、親戚の連絡先(氏名、続柄、電話番号、住所)
- 親しい友人、知人の連絡先
- お世話になっている人の連絡先(ケアマネージャー、民生委員、相談窓口など)
- 電力、ガス、水道、電話、インターネットなどの契約会社の連絡先
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お金・資産に関すること
- 利用している金融機関名、支店名、口座番号(通帳やカードの場所)
- 加入している保険(生命保険、医療保険、火災保険など)
- 年金の種類と加入状況
- 不動産やその他の資産について
- クレジットカード情報(番号そのものではなく、どこのカードがあるか程度)
- サブスクリプションサービス(定額制サービス)の契約内容
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身の回りの生活に関すること
- 電気、ガス、水道の契約内容やお客様番号
- 利用している通信サービス(固定電話、携帯電話、インターネット)
- インターネットバンキングや各種サービスのID、パスワード(直接書き出すのは避け、管理方法を記録するなど慎重に)
- ペットを飼っている場合は、ペットの種類、名前、かかりつけの病院、お世話を頼める人
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その他
- 葬儀やお墓に関する希望
- 遺言書の有無や場所
- 形見分けしたい大切なもの
- デジタル遺品(パソコンやスマートフォンのデータ、SNSアカウントなど)について
- 伝えたいメッセージ
これらの情報を全て一度にまとめるのは大変かもしれません。できるところから少しずつ始めることが大切です。
情報のまとめ方:ノート? パソコン?
情報をまとめる方法もいくつかあります。ご自身にとってやりやすい方法を選びましょう。
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手書きのノートやエンディングノート 市販のエンディングノートを活用したり、お気に入りのノートを使ったりする方法です。自分のペースで書き込めますし、特別な知識は必要ありません。手書きの温かみもあり、気持ちを整理しながら進められます。加筆修正も比較的容易です。
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パソコンやタブレット、スマートフォン WordやExcelなどのソフト、メモアプリ、または終活支援アプリなどを使う方法です。情報を整理したり、後から検索したりするのに便利です。ただし、パソコン操作に慣れている必要がありますし、データの紛失や情報漏洩のリスクには注意が必要です。パスワード管理も重要になります。
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ファイリング 大切な書類(保険証、通帳、不動産権利書、契約書など)を一つの場所にまとめておくことも、立派な情報整理です。どこに何があるかをリスト化しておくと、さらに分かりやすくなります。
どの方法を選ぶにしても、大切なのは「まとめておく場所」を決めて、信頼できる人(家族や友人など)にその場所を伝えておくことです。また、定期的に内容を見直して、最新の情報に更新することも忘れずに行いましょう。
始める際のポイントと注意点
- 完璧を目指さない: 最初から全てを網羅しようとせず、書きやすい項目から始めてみましょう。
- 一人で抱え込まない: もし可能であれば、信頼できる家族や友人に相談しながら進めるのも良いでしょう。
- 安全に配慮する: 特にパスワードなどの情報は、厳重に管理する必要があります。全てをまとめて書き出すのではなく、パスワード管理ツールの場所や、信頼できる人にだけ個別に伝えるなどの工夫が必要です。
- 定期的な見直し: 状況は変化します。年に一度など、時期を決めて見直す習慣をつけましょう。
まとめ:情報整理は未来の自分への贈り物
大切な情報の整理と記録は、難しく考えすぎる必要はありません。それは、将来の自分自身や、ご自身を大切に思ってくださる方々への準備であり、思いやりでもあります。
情報をまとめておくという具体的な行動が、一人暮らしの漠然とした不安を和らげ、日々の生活に安心感をもたらしてくれるはずです。できることから少しずつ、ご自身のペースで始めてみてください。
もし、何から始めたら良いか分からない場合は、地域の包括支援センターや相談窓口に相談してみるのも良いでしょう。専門家のアドバイスを得ながら進めることもできます。