もしもに備える 認知症の兆候と今からできる予防・相談
はじめに:将来への不安に寄り添って
一人暮らしで毎日を過ごしていると、ふとした瞬間に将来への不安を感じることがあるかもしれません。「もしも」の時にどうしたら良いのか、健康でいられるだろうか、といった心配は、どなたにも起こりうることです。特に、認知症に対して漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、正しく理解し、今からできる準備をしておくことで、その不安を少しでも和らげることができます。この先も安心して自分らしく生活を続けるために、認知症について知っておくべきことや、今からできる備えについて考えてみましょう。
認知症とはどんな病気?
認知症は、脳の病気や障害によって、記憶、判断力、思考力などに変化が現れ、日常生活に支障が出てくる状態を指します。単なる「加齢による物忘れ」とは異なり、体験したこと全体を忘れてしまったり、時間や場所が分からなくなったりすることがあります。
認知症にはいくつかの種類があり、原因や症状も様々です。病気の進行によって状態は変化しますが、早期に気づき、適切なケアや支援を受けることで、進行を穏やかにしたり、ご本人らしい生活を続けるための工夫をすることができます。
もしかしたら? 早期の兆候を知っておく
「最近、物忘れが増えたかな?」と感じることは、加齢に伴う自然な変化であることも多いです。しかし、以下のような変化が見られる場合は、認知症の初期の兆候かもしれません。
- 体験したこと全体を忘れてしまう: 例えば、朝食を食べたこと自体を忘れてしまう。
- 同じ話を繰り返す: ついさっき話したことなのに、何度も同じ話をしてしまう。
- 時間や場所が分からなくなる: 今が何時なのか、自分がどこにいるのかが分からなくなることがある。
- 日課だったことが難しくなる: 料理の手順が分からなくなる、お金の管理が難しくなるなど。
- 以前は興味があったことに関心がなくなる: 趣味や外出がおっくうになる。
- 性格や行動に変化が見られる: 些細なことで怒りっぽくなる、疑い深くなるなど。
これらの変化は、ご本人よりも周りの方が気づきやすい場合もあります。もし、ご自身や身近な方の様子で気になることがあれば、一人で抱え込まずに相談することが大切です。
「あれ?」と思ったら… どこに相談すれば良い?
「もしかしたら…」と感じた時に、どこに相談すれば良いのかを知っておくことは、安心につながります。
- かかりつけ医: いつも診てもらっているお医者さんに、気になることを話してみましょう。専門医への紹介や、必要なアドバイスがもらえます。
- 地域包括支援センター: お住まいの地域の地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを多方面から支える総合相談窓口です。保健師や社会福祉士などの専門職がいて、認知症に関する相談にも応じてくれます。どのようなサービスがあるか、どこに相談できるかなど、具体的な情報を提供してくれます。
- 認知症疾患医療センター: 認知症の専門的な診断や治療、相談ができる医療機関です。かかりつけ医や地域包括支援センターから紹介を受けることもできます。
- 保健所の専門相談: 保健所でも、認知症に関する専門職による相談会などが実施されている場合があります。
相談することで、不安が和らぎ、適切な対応につながる可能性があります。「年のせいかな」と決めつけず、専門家に話を聞いてもらうことから始めてみましょう。
今からできる! 認知症の予防策
完全に認知症を防ぐ方法はまだ確立されていませんが、日々の生活の中で、発症を遅らせたり、進行を緩やかにするために心がけられることがいくつかあります。
- 適度な運動: ウォーキングや軽い体操など、無理なく続けられる運動は、脳の活性化にもつながります。お散歩がてら、地域の公園まで歩いてみるのも良いでしょう。
- バランスの取れた食事: 野菜を多く摂る、魚を食べるなど、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
- 社会とのつながりを持つ: 地域活動への参加、友人との交流、趣味のサークル活動など、人と交流し、社会的な役割を持つことは、脳への良い刺激になります。公民館や市民センターの講座に参加してみるのもおすすめです。
- 脳を使う活動: 新しいことを学ぶ、読書、計算ドリル、パズル、手芸など、頭を使う活動を取り入れましょう。
- 質の良い睡眠: 十分な睡眠をとることも大切です。
- 生活習慣病の予防・管理: 高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、認知症のリスクを高めると言われています。健康診断を定期的に受け、かかりつけ医の指導のもと、しっかりと管理しましょう。
これらのことは、認知症の予防だけでなく、心身全体の健康維持にもつながります。すべてを完璧に行う必要はありません。ご自身のペースで、できることから少しずつ取り入れてみましょう。
将来の安心のために:周囲とのコミュニケーション
認知症について、ご家族や信頼できる方と気軽に話しておくことも大切です。もしもの時に、ご自身がどのような生活を送りたいか、どのような医療を受けたいかなど、希望を伝えておくことで、ご家族も安心して対応できます。
また、日頃から周囲との関係を大切にしておくことも、いざという時の支えになります。何か変化があった時に気づいてもらえたり、困った時に助けを求めやすくなったりするからです。
まとめ:備えは安心への一歩
認知症に対する不安は、誰にでも起こりうる自然な感情です。しかし、不安な気持ちのまま立ち止まるのではなく、正しい知識を得て、今からできる備えをすることで、将来への安心感につながります。
気になることがあれば専門機関に相談すること、そして日々の生活の中で、健康に良い習慣を取り入れ、人とのつながりを大切にすること。これらはすべて、自分らしい未来を安心して迎えるための大切な一歩です。一人で抱え込まず、頼れる場所や人に相談しながら、毎日を大切に過ごしていきましょう。