一人暮らしの住まい 安心ポイント 高齢者の安全と快適な暮らし
はじめに
一人暮らしを続ける上で、日々の暮らしの基盤となるのが「住まい」です。長く住み慣れた家でも、年齢を重ねるにつれて、安全や安心について気になる点が出てくるかもしれません。
これから先の毎日を、自宅で快適に、そして安心して過ごすために、住まいの安全性を改めて見直したり、いざという時に慌てないための準備を始めたりすることは、とても大切です。
このコラムでは、一人暮らしの方が自宅でより安全に、安心して暮らすための具体的なポイントや、困ったときの相談先についてご紹介します。ご自身のペースで、できることから取り組んでみましょう。
自宅内の安全対策を見直す
住み慣れた自宅の中にも、思わぬ危険が潜んでいることがあります。特に転倒や火災は、一人暮らしの場合、大きな事故につながりかねません。以下の点について、ご自宅を見回してみてください。
転倒を防ぐ工夫
- 段差の解消や注意喚起: 玄関、部屋の境、浴室の入り口など、小さな段差でもつまずきの原因になります。スロープを設置したり、段差に目立つ色のテープを貼ったりするのも有効です。
- 手すりの設置: 玄関、廊下、階段、浴室、トイレなどに手すりがあると、立ち座りや移動がぐっと楽になり、転倒予防になります。後付けできる手すりもありますので、検討してみてはいかがでしょうか。
- 床材の工夫: 滑りやすい絨毯やマットは避けるか、滑り止め加工が施されたものを選びましょう。
- 整理整頓: 床に物を置かないようにするだけで、つまずくリスクが減ります。
- 十分な照明: 足元が暗いと危険が増します。廊下や階段、玄関などには明るい照明を設置しましょう。人感センサー付きの照明も便利です。
火災を防ぐ工夫
- 火の元の確認: ガスコンロや暖房器具の火を完全に消したか、寝る前や外出前に必ず確認する習慣をつけましょう。
- 調理中の注意: 調理中は火元から離れないようにし、周囲に燃えやすいものを置かないようにしましょう。
- 寝具やカーテンの素材: 防炎加工が施されたものを選ぶと安心です。
- 住宅用火災警報器の設置と点検: 設置が義務付けられています。定期的に作動確認を行い、電池切れがないか確認しましょう。
- たばこの消し忘れに注意: 喫煙される場合は、完全に消えているか、吸い殻の後始末を確実に行いましょう。
自宅の防犯対策を考える
一人暮らしにとって、自宅の防犯も重要な安心材料です。日頃からできる簡単なことから始めてみましょう。
玄関や窓の対策
- 鍵の習慣: 短時間の外出でも、必ず鍵を閉める習慣をつけましょう。
- 補助錠の設置: ドアに補助錠を付けることで、侵入に時間がかかるため抑止力になります。窓にも補助錠や防犯フィルムを貼るなどの対策があります。
- 訪問者の確認: 知らない人が訪ねてきても、すぐにドアを開けず、インターホンやドアスコープで相手を確認しましょう。不審に感じたら対応せず、必要であれば警察に連絡することもためらわないでください。
- 「在宅」を装う: 長時間留守にする際は、新聞や郵便物を溜め込まないように手配したり、夜間だけ照明がつくタイマーを活用したりするのも良い方法です。
住まいの小さな困りごと、誰に頼む?
電球の交換、水栓からの水漏れ、エアコンの不調など、自宅でちょっとした困りごとが起きたとき、「誰に頼めばいいのだろう?」と悩むことがあるかもしれません。そんなときのために、いくつかの選択肢を知っておくと安心です。
- 自治体の相談窓口: まずは自治体の高齢者向けの相談窓口や地域包括支援センターに相談してみるのも良いでしょう。地域の支援サービスや、信頼できる事業者について情報を持っている場合があります。
- 地域のシルバー人材センター: 高齢者が長年の経験やスキルを活かして働く組織です。電球交換や簡単な修繕など、暮らしの中のちょっとした困りごとを頼める場合があります。費用も比較的安価なことが多いです。
- 民間の便利屋さんや専門業者: 水漏れなら水道業者、電気のトラブルなら電気工事業者など、専門の業者に依頼する方法です。事前に料金体系を確認し、複数の業者から見積もりを取るなど、信頼できる業者を選ぶことが大切です。最近では、高齢者向けのサービスを提供している業者もあります。
- ご近所や知人との助け合い: 日頃から良好な関係を築けていれば、困ったときに相談しやすいかもしれません。ただし、無理のない範囲で頼み、お礼はきちんと伝えるなど、お互いに気持ちよくいられる配慮が大切です。
すぐに困りごとがなくても、「もしこんなことが起きたら、どこに連絡しようか?」と一度考えて、連絡先などを控えておくと安心です。
いざという時のための備え
万が一、自宅で急な体調不良や事故が起きたときのために、いくつかの準備をしておきましょう。
- 緊急連絡先リストの作成: 家族、親戚、かかりつけ医、信頼できる友人や知人など、緊急時に連絡を取りたい人の名前と電話番号を紙に書いて、すぐに目につく場所に貼っておきましょう。救急隊員などが来た際にも役立ちます。
- かかりつけ医や持病の情報: 常備薬の名前や量、アレルギー、持病など、医療に関する重要な情報を、緊急連絡先リストと一緒にまとめておくと、救急搬送時などに役立ちます。
- 地域の見守りサービス: 自治体や地域の社会福祉協議会などが、一人暮らしの高齢者向けに見守りサービスを提供している場合があります。定期的な声かけや、緊急通報システムなど、様々なサービスがありますので、お住まいの地域の情報を調べてみることをおすすめします。
まとめ
一人暮らしの住まいの安全と安心は、日々のちょっとした意識と準備でぐっと高めることができます。今回ご紹介したポイントは、どれもすぐに始められることばかりです。
一度にご自宅の全てを変えるのは難しくても、まずは気になるところから、一つずつ改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。地域の相談窓口やサービスなども活用しながら、ご自身の住まいを、これからも安心して暮らせる心地よい場所にしていきましょう。