入院や自宅療養に備える 一人暮らしの私が今できる準備
はじめに:一人暮らしでの病気・怪我への不安に備える
一人暮らしをしていると、「もし急に体が動かなくなったらどうしよう」「病気で入院することになったら、誰に頼めばいいのだろう」と、将来への漠然とした不安を感じることがあるかもしれません。特に、ご家族が近くにいらっしゃらない場合、こうした不安はより大きくなることもあります。
しかし、こうした「もしも」の時に慌てないために、今からできる準備があります。少しずつ準備を進めておくことで、心にゆとりが生まれ、いざという時にも冷静に対応できるようになります。
この記事では、病気や怪我による入院、あるいは自宅での療養が必要になった場合に備えて、一人暮らしの方が具体的にどのような準備をしておけば良いのかをご紹介します。
入院や療養に備えるための大切な準備ステップ
「備える」といっても、特別なことばかりではありません。まずは、身近なところから確認してみましょう。
1. 連絡先リストの整備と共有
体調を崩した時、まず大切なのは「誰かに連絡すること」です。緊急時にすぐに連絡できるよう、親族や友人、かかりつけ医、民生委員など、頼れる方の連絡先リストを作成しておきましょう。
- 作成するリストの例:
- 親族、友人、近しい知人
- かかりつけの医療機関、担当医
- ケアマネジャー(利用している場合)
- 民生委員、地域の相談窓口
- 利用している見守りサービスや緊急通報サービスの連絡先
- 大切な情報(契約内容、保険証の場所など)を知っている信頼できる人
このリストは、すぐに手に取れる場所に置いておくことが重要です。また、信頼できる親族や友人にコピーを渡しておいたり、デジタル機器に登録したりするなど、ご自身が使いやすい方法で備えておきましょう。
2. 必要な手続きや管理について誰に相談するか決めておく
入院が長引く場合や、自宅での療養が必要になった場合、家賃や公共料金の支払い、郵便物の管理、預貯金の管理など、ご自身で対応できないことが出てくる可能性があります。
元気なうちに、信頼できる親族や友人と「もしもの時は、このようなことをお願いできるか」と相談しておきましょう。すぐに頼める人がいない場合でも、地域の社会福祉協議会や地域包括支援センターに相談することで、必要な支援や制度について情報を得ることができます。
- 相談しておきたい事柄の例:
- 郵便物や回覧板の確認
- 公共料金や家賃などの支払い代行
- 預貯金の管理
- 役所への届け出や手続き
こうした内容は、口頭だけでなく、簡単なメモやエンディングノートなどにまとめておくと、お願いされた方も分かりやすく安心です。
3. 入院時に必要なものをリストアップしておく
急な入院となった場合でも慌てないよう、入院時に必要になるであろうものを普段から把握しておきましょう。可能であれば、まとめておく場所を決めておくと、ご自身や連絡を受けた方が準備しやすくなります。
- 入院時の持ち物リストの例:
- 健康保険証、診察券、お薬手帳
- 印鑑、筆記用具
- 着替え(下着、パジャマなど数日分)
- タオル、洗面用具(歯ブラシ、石鹸など)
- 滑りにくい履物
- 常用している薬
- 現在服用中の薬が分かるもの(お薬手帳がない場合)
病院によって必要なものが異なる場合もありますので、かかりつけ医に聞いてみたり、地域の病院の案内を確認したりすることも参考になります。
4. 自宅をどうするか? 戸締りや電気・ガスなどの確認
家を留守にする際に気になるのが、戸締りや火の元です。急な入院となった場合でも、最低限の安全確認ができるように準備しておきましょう。
- 確認しておきたいことの例:
- 全ての窓や玄関の施錠
- ガス栓や電気のブレーカー(状況に応じて)
- 冷蔵庫の中身(長期不在の場合)
- ペットの世話(ペットを飼っている場合、預け先や世話をお願いできる人を確保しておくことが非常に重要です)
信頼できる近所の方や友人にお願いできる場合は、事前に相談しておくと安心です。
5. 退院後、自宅での療養が必要になったら? 頼れるサービスを知っておく
病状によっては、退院後すぐに元の生活に戻るのが難しい場合があります。自宅での療養が必要になった場合に利用できるサービスを知っておくことも大切です。
- 利用できる可能性のあるサービスの例:
- 訪問看護、訪問介護
- 配食サービス
- デイサービス、デイケア
- 福祉用具のレンタル・購入
これらのサービスは、地域の医療機関やかかりつけ医、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などに相談することで情報を得られます。介護保険の申請など、手続きが必要な場合もありますので、早めに相談しておくとスムーズです。
備えを「見える化」する工夫
これまで挙げたような準備を、一箇所に分かりやすくまとめておくことをお勧めします。「わたしの安心ファイル」や「もしもノート」のようなものを作成し、必要な情報(連絡先、お願いしたいこと、保管場所、契約内容など)をまとめておきましょう。これにより、ご自身だけでなく、もしもの時に駆けつけてくれた方も必要な情報をすぐに見つけやすくなります。
一人で抱え込まずに、まずは相談を
こうした準備は、決して一人で全てを行わなければならないものではありません。不安な気持ちや、どう準備すれば良いか分からない場合は、地域の相談窓口や信頼できる人に話をしてみてください。
- 主な相談先:
- 地域包括支援センター
- 市区町村の福祉担当窓口
- 社会福祉協議会
- 民生委員
専門家や地域の支援者とつながることで、利用できるサービスや制度を知ることができ、準備を進める上での大きな助けになります。
まとめ:備えることで得られる安心感
病気や怪我は予測できませんが、事前に少しでも備えておくことで、「もしも」の時の不安を軽減し、より安心して療養に専念できるようになります。
今日ご紹介した準備は、どれも今から少しずつ始められるものです。完璧を目指す必要はありません。まずは、連絡先をまとめることからでも、信頼できる人に相談することからでも、できることから始めてみましょう。
こうした備えは、自分自身のためだけでなく、もしもの時に助けてくれるかもしれない大切な方々への配慮にもつながります。安心して未来を迎えるための一歩として、ぜひ参考にしていただければ幸いです。